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とあるエンジニアの雑記帳

東京エスムジカの新曲「SUPERNOVA」で楽曲配信を考えてみる

iTunesやmoraといったマーケットプレイスサービスから買うのが一般的になっている中、東京エスムジカが既存のマーケットプレイスを用いずに、自身のサイト上で独自に新曲の配信を始めています。

東京エスムジカのサイトには、

通常の(iTunes Plus相当)m4aファイルに加えて、 高音質版、高画像ビデオを収録しているため、サイズが大きいです(270MB)、そのため従来の販売サイトでは難しいのです。その分、スタジオ直送まさに生の音をお届け!できます。

と書かれており、楽曲に対するこだわりが窺えます。
東京エスムジカを主宰する早川大地氏といえば、昨年はタイ出身のMayがボーカルを務めるSweetVacationや、ピストルバルブEvery Little Thingsへの楽曲提供でもお馴染みですが、クリエイティブ・コモンズライセンスで楽曲を公開したり、SweetVacationRadioというPodcastのちょっとしたラジオ番組的なコンテンツを配信していたり、USTバケイションというUStream配信による動画配信を行っていたりと、音楽活動を通じてWebを駆使しているアーティスト・クリエイターでもあります。

現在配信が行われている「SUPERNOVA/東京エスムジカ feat. Bossarica」は、現代音楽とエスニック(民族的な)の融合といった感じの挑戦的で力強さを感じる楽曲ですが、それ以上に今回の楽曲配信は、Webを用いた実験的要素の強い試みだと感じます。特に、マーケットプレイスを利用していない点は特筆すべき事項に値するでしょう。

最近は、iPodファミリー(iPod,iPhoneなど)やウォークマンなどのデジタルオーディオプレーヤーの普及により、CDを買うよりもWeb上で音楽を買う方向に世の中の流れがシフトしてきています。この流れは、CDの売り上げが低迷していることや、若者向け音楽文化の発信地としての役割を担ってきたHMV渋谷が閉店したことからも明らかだと思います。

Web上で音楽を購入する際は、何らかのマーケットプレイスを利用することになります。iPodファミリーであれば、iTunes、ウォークマンであればmoraがそれに当たります。利用者にとってのマーケットプレイスのメリットは、検索の容易性であったり、売れ筋や注目の楽曲が一目で分かる、そして何と言っても楽曲が簡単に購入出来、購入した楽曲を簡単にデジタルオーディオプレーヤーへ転送して楽しめる点にあります。

売り手であるアーティストにとっては、マーケットプレイスの膨大な会員数は潜在的な顧客へ繋げることにつながり、売り上げ向上やファンの増加に繋げることができます。また、DRMによって楽曲に対する著作権の保護を受けることができます。デメリットは、売り上げに対して手数料が発生することがまず挙げられますが、それほどたいしたことでは無いでしょう。一番のデメリットは、アーティストが最高音質で楽曲を提供しようとしても、マーケットプレイスで提供する上では、楽曲の表現・フォーマットはマーケットプレイスの標準に従わなければならないということが挙げられます。

今回の東京エスムジカの新曲は、まさに容量やフォーマットの問題により、既存のマーケットプレイスでの展開が難しいということでに独自に配信をしているものになりますが、徹底して音質にこだわるか、潜在顧客の多いマーケットプレイスでの販売を取るかという点で非常に悩ましいところではないかと思います。私感としては、表現方法の1つとしてこのような方法もありだなと感じました。良い物を提供することに繋がれば、既存の仕組みである必要は無いのかもしれませんね。